[画家志望日記]絵のテーマを説明する、と言う壁。

皆さんは、「自分が何を描いたのか?」を説明できる絵描きでしょうか?
私は絵のテーマを明確に説明できない方の絵描きですが、
先日、何やら奇妙なことを言うアーティストに会いました。

「描きたいものが無い奴はアートしちゃだめなのか?」

彼の作品はキャンバスに包帯を巻いただけのもの。
画力はあるけど描きたいものが無いからキャンバスを加工することにしたそうで。
周りの人はなんだかモヤモヤが溜まって、
それを絵にしているらしいけど、
そういう「モヤモヤ」が無い、表現したいものが無い奴はアートしちゃだめなのか?と言う弁でございました。

私の感想としては、

い、意味が分からない……(;^ω^)

の一言に尽きます。

出会った場所は公募展の受賞者パーティーでのこと。
彼の作品は小さいながら主催者側にウケが良かったというのに、
彼の話を聞けば聞くほど凍る会場、
なかなか不思議な世界でございました。

描きたいもの(=モヤモヤとか感動とか)が無いなら、
そもそもキャンバスを手に取らないのでは……?
いったいどういう屁理屈なのかしら?

彼はどうにも、作品は現代アート寄りなのに
NHKの現代アート特集番組すら見て無いようでございました。

正直もう、ファインアートの最前線はキャンバスと筆で描く時代ではないんです。

私が生まれる前から
キャンバスは変形するし、割るし、破るし、

そもそもキャンバスを使う方が古い。

現代アートの最前線は凄絶な頭脳戦であり、
人生そのもののを使っての表現であり、
生き方丸ごとをアートする、と言うのが流行りなんですよ。

草間彌生大先生だって若い時は
アメリカの大通りで裸の男女に平和の象徴の水玉を描きまくるというスキャンダルをしたわけで。

岡本太郎記念館

具体、と言う一大ブームを起こした岡本太郎の一派は
電球(LEDじゃないから熱いし危ないよ)を身にまとって踊ったりだとか、
足で絵を描いてみたりだとか、
「とにかくだれもやったことがないことをやる」アート集団として注目を浴びたんです。

マルセル・デュシャンが便器をひっくり返したあの頃から、
最前線の「アート」の評価基準は
作品の美しさではなく、
コンセプトの方を重視した世界になりました。

デザイン

と言うか、多種多様な素材を「アート」と定義してしまった
マルセル・デュシャンを無視できなかったアート界、
コンセプト以外に明確な線引きができなくなってきた、と言うのが
本音じゃないかなーと私は思っています。

世相を反映しただとか、
現代の矛盾を突くだとか、
人生の根幹を表現しているとか。

正直現代アートな美術館に飾られてる作品を観ただけで
作品に込められたコンセプトを理解できる人なんて
ほぼいないと思われます。
どう考えても頭脳戦であり、舌戦の世界ですよね。

コンテとは

ネットも発達したことだし、
作家は思考回路そのものを開示し、
制作過程すべてを晒して根拠とし、
テーマそのものに支援を募る。

中学生の私は絶望しましたよー。
私は巧い絵が描きたいわけでは無かったけれど、
そもそも絵と言う手段を古いとするアート界に。

作品は、おまけなんです。
アーティストは生き方そのモノをショーウィンドウに飾り、
その複製と言うか、一部分とされる作品を販売する。
芸能人とそのブロマイド的な関係ですよね。

ステンドグラス フラックス用筆

アーティストは
自分と言う人間をブランディングしなければいけないのか、

と言う結論に至った高校生の私は、
自分の内向的な性格を鑑みて
画家ではなく絵画教師を目指すことにしたのですが……

まあ⇒自己紹介で語った通り(;^ω^)
ばっちり挫折して紆余曲折あり現在に至ります。

さて諦めきれてなかった「画家になる」と言う夢を片手に
うつ病から脱し、また走り出した私ですが、
いまだに苦しんでいるのがこの、

「テーマを説明する」

と言うアーティストとしての必須項目です。

これが、本当に難しい。
私が海外へ、画廊へ、自分の作品を持ち込むことを恐怖する理由がここにあります。

プライドが高すぎるとかいろいろ理由はわかっているんですが、
この恐怖のスタートを一言で説明するなら、

私が描いているのは「感情の印象」だから、と言う理由になります。

サルヴァドール・ダリの精神世界の根幹を表現せんとするシュルレアリスム
よりもずっと表面的なものであり、

ジャクソン・ポロックの身体の動きを表現するアクション・ペインティング
ほど描画行為の軌跡を重視することも無い描き方で、

スーパーリアリズムのようにわかりやすい超絶技巧派でもなければ、

物語性のある風景やモノや生命体でもない。

技術的・技法的に新しいことは何もなく、
ただ感情の表面をさらってきた絵になります。

そう、正しく抽象画なんです。描きたい部分だけを抽出した図像なんですよ。

個展準備

私は私の絵に、題名をつけることさえ辞めてます。
(⇒理由についてはこちらの過去記事をどうぞ
公募に出す時だけは規約上無理やり付けてますけどね(;^ω^)

一枚一枚の説明がほとんどない状態で、
どうやって絵のプロ相手にプレゼンしたらいいのかわからない。
絵画のテーマの説明は、私にとってまだまだ悩む課題です。

ではでは本日はこの辺で。
この記事作者の私こと、吉田絵美の作品集は⇒コチラから。
良ければゆっくり遊んでいって下さいね。

それではまた別の記事でお会いしましょう(^^)/

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